個人ブログで病院名を明記することはNGなのでしょうか?
ブログをやっていて、ケガや入院をした経験談を記事として書く方は結構いらっしゃると思います。
また、Twitter(ツイッター)やYoutube(ユーチューブ)、Facebookなどのいわゆるソーシャルメディアで情報を発信している方は自分のSNSで病院を名指しで公開する方も沢山いらっしゃいますよね。
最近だと、TikTok(ティックトック)やInstagram(インスタグラム)などの動画や写真の共有サービスもユーザー数を伸ばしているソーシャルメディアです。
ブログやその他のソーシャルメディアで病院名を公開して治療結果や治療の過程、ビフォー・アフターを公開してはダメなのでしょうか?
先に答えを言ってしまうと
ブログやSNSなどのソーシャルメディアで”病院名”を明記した投稿をすることは
「限りなくNG」です。
実際、わたしは闘病記録に病院名を書くことを辞めました。
これを知らないと後でとんでもないことになってしまうかも知れませんよ!?
なぜ、ソーシャルメディアに病院名を載せることは限りなくNGなのか、実際の経験談からご紹介します。
経験談
私は実際に右手首の骨を骨折する怪我をしてしまったため、病院名を公開して自身の骨折したときの闘病経験をブログに書き残していました。
その時に書いた記事はこちら
こちらの記事では、近所の整形外科に骨折と診断されてから3週間後に骨がズレてきているために手術が必要になる可能性が高いと判断され、大手の病院を紹介されたことを記事に残しています。
この記事は2020年の7月に書いたものですが、後から調べてみてブログ上で病院名を公開することを止めました。
Google検索にその記事が引っかからず誰にも見られないから
当時の私には記事がGoogleの検索結果に引っかからない理由が分からず、私なりに色々と調べてみました。
検索結果に出てこない
Googleのサーチコンソール(検索結果を出力するための検索エンジンにインデックスされているかどうかなどを確認できるツール)では、その記事はインデックスされているはずですが、いくらGoogleで検索しても記事がヒットしません。
通常、Googleの検索エンジンに記事が評価されるには3か月程度時間がかかるものなので、時間が掛かっているのかな?と思っていましたが数ヵ月経った後にGoogleで検索してみましたが全く記事がヒットしませんでした。
内容に関わらずNGなの?
記事の内容自体は個人の骨折に関する体験談を書いただけのもので「病気や骨折などの怪我が必ず治る」といったものでもないし、ましてや病院を批判するような誹謗中傷記事を書いていた訳でもありません。
何かがおかしいと思い詳しく調べてみると検索にヒットしない理由が分かりました。
理由は、厚生労働省が医療に関する広告について定めた「医療広告ガイドライン」にありました。
「医療広告ガイドライン」を見てみると、ブログやソーシャルメディアで病院名を明記することが「限りなくNG」である理由が分かります。
「医療広告ガイドライン」
医療に関する広告についてのガイドライン「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針 医療広告ガイドライン」
このガイドラインでは、個人ブログやソーシャルメディアも広告の一部として認めており、
広く世間に見られることを前提としているブログやソーシャルメディアも広告にあたる対象として定められています。
ブログはインターネット上の広告
第2-5「広告に該当する媒体の具体例」で、インターネット上の広告に関する規定がされています。
ア チラシ、パンフレットその他これらに類似する物によるもの(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む。)
引用元:医療広告ガイドライン
イ ポスター、看板(プラカード及び建物又は電車、自動車等に記載されたものを含む。)、ネオンサイン、アドバルーンその他これらに類似する物によるもの
ウ 新聞紙、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備による放送を含む。)、映写又は電光によるもの
エ 情報処理の用に供する機器によるもの(Eメール、インターネット上の広告等)
オ 不特定多数の者への説明会、相談会、キャッチセールス等において使用するスライド、ビデオ又は口頭で行われる演述によるもの
これによると、個人ブログも当然インターネットなどで広く人に見られることを前提としたメディアであるため、記事の内容に関わらず病院名をブログで公開することは「限りなくNG」になります。
しかし、ちょっと待ってください。
第2-6「通常、医療に関する広告とは見なされないものの具体例」の「(3) 患者等が自ら掲載する体験談、手記等」では、以下を確認することができます。
患者が自らの体験談を書く場合
(3) 患者等が自ら掲載する体験談、手記等
引用元:医療広告ガイドライン
自らや家族等からの伝聞により、実際の体験に基づいて、例えば、A病院を推薦する手記を個人Xが作成し、出版物やしおり等により公表した場合や口頭で評判を広める場合には、一見すると本指針第2の1に掲げた①及び②の要件を満たすが、この場合には、個人XがA病院を推薦したにすぎず、①の「誘引性」の要件を満たさないため広告とは見なさない。
ただし、A病院からの依頼に基づく手記であったり、A病院から金銭等の謝礼を受けている又はその約束がある場合には、①の「誘引性」を有するものとして扱うことが適当である。また、個人XがA病院の経営に関与する者の家族等である場合にも、病院の利益のためと認められる場合には、①の「誘引性」を有するものとして、扱うものであること。
上記、引用文の第2-6の「(3) 患者等が自ら掲載する体験談、手記等」では、記事を書いた本人に病院を広告する意思はなく、患者の主観に基づく闘病経験の記録であれば「広告とは見なさない」とあり、この場合は問題なしと解釈できます。
※病院からの依頼や金銭の授受がある場合はその限りではない。
医療記事はデリケート
しかし、医療に関する記事を書く際は、扱いが非常にデリケートで細心の注意を払わなくてはいけません。
医療関係者でない場合は、医療記事を書く場合の「ガイドライン」に沿ったものかどうかの判断が非常に難しく知らない内に医療広告ガイドラインに違反している可能性もあるんです。
人の健康に関するニュースや広告はそれほどデリケートなもので、経験談を書いているつもりでも、読み手側の解釈次第では誤解を与えかねない書き方をしてはいけないという事ですね。
広告に関するガイドラインの他にも、当然ですが嘘・虚偽、おおげさ、紛らわしい表現をしてしまった場合は記事を見た患者、病院、関係者に迷惑をかけてしまう可能性があり、個人の闘病体験談であっても医療記事を書く際は注意しましょう。
違反は懲役6ヶ月以下または罰金30万円以下
「医療広告ガイドライン」に違反すると懲役6か月以下、または最大30万円の罰則が科されます。
医療関係者以外の方が医療記事を書くことは非常に危険な行為であると考えられますよね。
個人の体験や闘病で記録であっても広く世間に見られる可能性のあるメディアを使う場合は、書き方に気を付けましょう。
わずかな認識の齟齬で、虚偽と捉えられてしまう危険性があります。
以下は、虚偽広告として定義されている具体例を抜粋したものです。
内容が虚偽にわたる広告(虚偽広告)
【具体例】・ 絶対安全な手術です!
・ 「どんなに難しい症例でも必ず成功します」
→絶対安全な手術等は、医学上あり得ないので、虚偽広告として扱うこと。
・ 厚生労働省の認可した○○専門医
→専門医の資格認定は、学会が実施するものであり、厚生労働省が認可した資格ではない。・ 加工・修正した術前術後の写真等の掲載
→あたかも効果があるかのように見せるため加工・修正した術前術後の写真等については、虚偽広告として取り扱うべきであること。・ 「一日で全ての治療が終了します」(治療後の定期的な処置等が必要な場合)
→治療後の定期的な処置等が必要であるにもかかわらず、全ての治療が一日で終了するといった内容の表現を掲載している場合には、内容が虚偽広告として取り扱うべきであること。・ 「○%の満足度」(根拠・調査方法の提示がないもの)
データの根拠(具体的な調査の方法等)を明確にせず、データの結果と考えられるもののみを示すものについては、虚偽広告として取り扱うべきであること。また、非常に限られた患者等を対象に実施された調査や謝金を支払うことにより意図的に誘導された調査の結果など、公正なデータといえないものについても、虚偽にわたるものとして取り扱うべきであること。・ 「当院は、○○研究所を併設しています」(研究の実態がないもの)
引用元:医療広告ガイドライン
法第 42 条の規定に基づき、当該医療機関を開設する医療法人の定款等において同条第2号に掲げる医学又は歯学に関する研究所の設置を行う旨の定めがある場合等においても、研究している実態がない場合には、虚偽広告として取り扱うべきであること。
もしも、上記に思い当たるものがあればその記事は修正・もしくは速やかに削除するようにしましょう。
ソーシャルメディア・SNSもインターネット上の広告
インターネットを通して広く見られる可能性があるという意味合いではSNSも同じく「医療広告ガイドライン」に規定さえているインターネット上の広告にあたるため、ソーシャルメディア・SNSで病院名を公開した情報を発信することも「限りなくNG」であると言えます。
過激な発言をしている人は要注意
病院や医療関係の誹謗中傷記事を書いてしまうと最悪の場合、病院から訴えられてしまう可能性があります。
一般にインフルエンサーと言われる、インターネット上で発言力の強い方が誹謗中傷記事を書いてしまったらどうなるでしょうか?
すぐに記事は拡散されてしまい取り返しの付かない事になってしまうことが容易に想像できます。
ブログ初心者やSNSのフォロワーが少ない方であっても誹謗中傷記事は拡散されてしまう危険性がありますので、個人の感想や体験談であったとしても医療関係の記事や発言は控えるようにした方が良いと思われます。
もしも誹謗中傷記事が拡散されたら・・・
あなたの書いた特定の医療機関に対する誹謗中傷記事が拡散されてしまうと、医療機関から損害賠償を求められてしまう可能性があります。
病院名などをSNSで記載することは病院や病院の関係者に迷惑をかけてしまうことになる可能性があるので大変危険な行為です。
このため、SNSなどのソーシャルメディアで病院名を明記することは控えたほうが無難です。
一度拡散されてしまった記事は、拡散された後に消したところですでに「刻すでに遅し」ということになってしまいます。
この記事のまとめ
個人の闘病記録は、同じ病気や怪我をした人に見てもらいたいし自分が回復した経緯や経験を同じような境遇の人に共有することで、社会貢献出来ていると思いますよね。
私も骨折したときは、体験記がないかどうかをネットで沢山探してみましたが、なかなか見つけることができず自らの体験を記事として残しました。
しかし、医療は人の命を守るデリケートな領域なので、「ソーシャルメディアで病院名を書いたらいけないの?」という疑問に対する結論としては、書いても良いけど「限りなくNG」な場合が多くガイドラインに違反してしまった場合はペナルティが課せられてしまう可能性もある。ということになります。
嘘や虚偽・誇大広告にあたるような記載をしてしまうと後々、大変なことになってしまう可能性があります。
経験談であっても記事を見た人に誤解を与えるような書き方をしていないかどうか気を付けるようにしましょう。
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